消費額9.5兆円。訪日客数4,114万人。
2025年、訪日インバウンド市場は再び過去最高を更新しました。
注目すべきは、インバウンド消費が「自動車産業に次ぐ外貨獲得産業」に成長していること。半導体、鉄鋼を抜き、今や日本経済を支える柱となっています。
本記事では、観光庁「インバウンド消費動向調査」やJNTO「訪日外客統計」を始めとする各種データをもとに、2025年の市場動向を詳しく解説します。
1. 2025年訪日インバウンド市場の全体概況
1-1. 訪日客数・消費総額ともに過去最高を更新
2025年の訪日客数は4,114万人、消費総額は9兆4,550億円。 どちらも過去最高を記録しました。
前年(2024年)と比較すると、訪日客数は約12%増、消費総額は約16%増。客数の伸びを上回るペースで消費が拡大しています。

1-2. コロナ禍前(2019年)と比較した指標推移
コロナ禍前の2019年と比較すると、市場の質的変化が見えてきます。
| 指標 | 2019年 | 2024年 | 2025年 |
|---|---|---|---|
| 消費総額 | 4.8兆円 | 8.1兆円 | 9.5兆円 |
| 消費額単価 | 15.9万円 | 22.7万円 | 22.9万円 |
| 訪日客数 | 3,188万人 | 3,687万人 | 4,114万人 |
消費総額は2019年比でほぼ2倍。一方、訪日客数は約1.3倍にとどまっています。
つまり、「人数」以上に「ひとりあたりの消費額」が伸びているのです。

1-3. 自動車産業に次ぐ外貨獲得産業へ
インバウンド消費の規模を他産業と比較すると、その存在感は明らかです。
財務省貿易統計によると、2024年時点で主要品目の輸出額トップは自動車(約18兆円)。インバウンド消費(8.1兆円)は、半導体等電子部品(約6兆円)、鉄鋼(約5兆円)を抜き、自動車に次ぐ第2位の外貨獲得源となりました。
2025年は9.5兆円に到達。政府が掲げる「2030年に15兆円」の目標に向けて、着実に前進しています。

2. 国・地域別の消費動向
どの国・地域からの訪日客が、どれだけ消費しているのか。マーケティング戦略を立てる上で欠かせないデータです。
2-1. 消費総額は中国がトップ、米国が3位に浮上
2025年の国・地域別消費総額ランキングは以下のとおりです。
| 順位 | 国・地域 | 消費総額(億円) |
|---|---|---|
| 1 | 中国 | 20,026 |
| 2 | 台湾 | 12,110 |
| 3 | 米国 | 11,241 |
| 4 | 韓国 | 9,864 |
| 5 | 香港 | 5,613 |
| 6 | オーストラリア | 4,104 |
| 7 | タイ | 2,512 |
| 8 | シンガポール | 2,294 |
| 9 | カナダ | 2,196 |
| 10 | 英国 | 2,071 |
中国が2兆円超でトップ。注目は米国が3位に浮上したことです。欧米豪からの消費が着実に存在感を増しています。
地域別のシェアを見ると、東アジアが58%、欧米豪が31%、東南アジアが11%という構成です。

2-2. 欧米豪の消費が前年比28%増と急伸
地域別の消費総額を前年と比較すると、興味深い傾向が浮かび上がります。
| 地域 | 2024年 | 2025年 | 前年比 |
|---|---|---|---|
| 東アジア | 4.45兆円 | 4.76兆円 | +7% |
| 東南アジア | 0.93兆円 | 0.91兆円 | -2% |
| 欧米豪 | 1.99兆円 | 2.54兆円 | +28% |
欧米豪からの消費が前年比28%増と大きく伸長。 長期滞在・高単価消費を志向する欧米豪市場の拡大が、全体の消費額を押し上げています。
一方、東南アジアは微減。市場ごとに異なる動きを見せており、戦略的なターゲティングが求められます。

2-3. 中国市場の動向:年初好調も後半は減速
中国市場の月別推移を見ると、年間を通じた変動が顕著です。
1月は前年比236%と急増。春節需要と航空便の回復が重なりました。しかし、日中関係の悪化もあり後半にかけて伸びは鈍化し、12月は前年比55%に。
2026年以降も回復の見通しは立っていません。 日中関係や中国経済の減速など、外部要因の影響を受けやすい市場です。
中国市場への依存度を下げつつ、欧米豪や東南アジアとのバランスを取ることが、リスク分散の観点からも重要といえます。

3. 消費単価から見るインバウンド市場
3-1. 消費単価トップ5はすべて欧州・豪
ひとりあたりの消費単価ランキングを見ると、欧州勢の強さが際立ちます。
| 順位 | 国 | 消費単価 | 2024年比 |
|---|---|---|---|
| 1 | ドイツ | 39.4万円 | 1.18倍 |
| 2 | 英国 | 39.0万円 | 1.02倍 |
| 3 | 豪州 | 39.0万円 | 1.02倍 |
| 4 | スペイン | 36.4万円 | 0.98倍 |
| 5 | フランス | 36.0万円 | 1.00倍 |
トップ5はすべて欧州・豪の国々。 平均消費単価22.9万円を大きく上回る35〜40万円を消費しています。
ドイツは前年比1.18倍と、単価の伸びも顕著。長期滞在で複数都市を周遊し、高付加価値な体験にお金を使う傾向があります。

3-2. 「訪日客数」より「消費額」を追うべき理由
ここで改めて考えたいのは、「何を指標にすべきか」という点です。
2025年の実績を見ると、訪日客数は前年比12%増。消費総額は16%増。消費単価はほぼ横ばいながら、22.9万円と高水準を維持しています。
オーバーツーリズムが各地で問題となるなか、人数を増やすことだけが正解ではありません。
「1人あたりいくら消費してもらえるか」——この視点が、持続可能な観光を実現する鍵になります。
4. 訪日インバウンド市場の課題
4-1. オーバーツーリズムと地域分散
京都、鎌倉、河口湖、白川郷、銀山温泉。スノーシーズンはニセコや白馬。
特定の観光地への集中が続いています。地域住民の生活環境への影響も無視できません。
政府は「地方誘客」を重点政策に掲げ、地方で2泊することを目標としています。観光庁の令和8年度予算では、オーバーツーリズム対策に前年比2.5倍の予算が計上されました。
地方への誘客を進めるには、各地域での観光コンテンツ造成とプロモーションが欠かせません。 国や自治体も、こうした取り組みを後押しする補助金制度を充実させています。
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4-2. 為替リスクと市場の多様化
2024年から2025年にかけて、1ドル=150円前後の円安環境が続きました。
円安は訪日外国人の購買力を高め、消費拡大に寄与した面があります。一方で、円高に振れた場合の下振れリスクも抱えています。
また、前述のとおり中国市場は外部要因の影響を受けやすい状況です。
欧米豪、東南アジアを含めた市場の多様化が、安定的な成長には不可欠です。
5. まとめ
2025年の訪日インバウンド市場は、消費総額9.5兆円、訪日客数4,114万人と過去最高を更新しました。
ポイントをまとめます。
- インバウンド消費は自動車産業に次ぐ外貨獲得産業に成長
- 消費総額は2019年比でほぼ2倍、「量」より「質」の向上が顕著
- 欧米豪からの消費が前年比28%増と急伸
- 中国市場は回復基調だが、年後半に減速
- 消費単価トップ5は欧州勢が独占(35〜40万円)
- 「訪日客数」ではなく「消費額」を追う視点が重要
オーバーツーリズム対策と地方誘客、そして市場の多様化。これらの課題に取り組みながら、2030年の目標である「訪日客6,000万人・消費額15兆円」に向けた歩みが続きます。
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データ出典
- 観光庁「インバウンド消費動向調査」
- JNTO「訪日外客統計」
- 財務省「貿易統計」
※本記事で使用している図表は、上記データを基に訪日インバウンドナビにて作成しています。記事リンク付きで自由に転載可能です。
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